Androidの最新OSは毎年9月ごろリリースされますが、それよりも早いタイミングで体験できるプログラムが用意されています。
まず例年2月ごろにDeveloper Previews(デベロッパープレビュー版)が配信され、主にアプリ開発者が、次期バージョンとの互換性を検証します。
次に5月ごろ、Beta(ベータ版)が配信され、よりユーザー目線でのフィードバックを受けながらOSをアップデートしていき、最終9月ごろに正式版としてリリースされます。

Android 12におけるスケジュール例。
以上をまとめると、時期によって3つのパターンが存在し、いち早く最新のAndroid OSを体験するには、デベロッパープレビュー版もしくはベータ版への登録が必要です。
デベロッパー プレビュー版 | ベータ版 | 正式版 | |
---|---|---|---|
配信時期 | 例年2月〜5月ごろ | 例年5月〜8月ごろ | 例年9月ごろ |
導入の難易度 | 難しい | 普通 | カンタン |
動作の安定性 | とても不安定 | 不安定 | 安定 |
そこで本記事では、Android 12を例に、デベロッパープレビュー版およびベータ版を設定して、最新OSをインストールする手順を紹介します。
上級者向けの内容となっていますが、興味のある方はぜひどうぞ。
この記事では、次期Android OSのベータ版について扱っています。Androidアプリのベータ版に関する情報をお探しの場合、詳細は関連記事【Androidでベータ版アプリを試す方法! Google Playの早期アクセスで未リリースゲームをインストールしよう】で解説しています。

Android 12のプレビュー版をインストールする方法
デベロッパープレビュー版は、最も早い時期から最新のAndroid OSを体感できるプログラムです。
ベータ版と比較すると、パソコン必須で導入の難易度が高く、また動作も不安定なため、メインで使っているスマートフォンへの導入はオススメできません。
このパートでは、Pixel 3a XLへAndroid 12のプレビュー版を導入するケースを例に、手順を紹介します。
- 前提Android Developer Previewsの注意点
- 説明①Android 12のOTAイメージを手動でサイドロードする手順
- 説明②プレビュー版をアンインストールして元に戻す手順
前提:Android Developer Previewsの注意点
デベロッパープレビュー版を導入する前に、次の3点を留意しておきましょう。
- 導入可能な端末は指定されている
- プレビュー版では使えないアプリがある
- プレビュー版から元に戻すと初期化される
1. 導入可能な端末は指定されている
導入対象の端末はGoogleデバイスに限定されており、例えばAndroid 12のプレビュー版は、次の9機種が対象となります。
- Pixel 5
- Pixel 4a / Pixel 4a (5G)
- Pixel 4 / Pixel 4 XL
- Pixel 3a / Pixel 3a XL
- Pixel 3 / Pixel 3 XL
2. プレビュー版では使えないアプリがある
そもそもデベロッパープレビュー版自体、アプリ開発者が次期バージョンとの互換性を検証する目的で配信されるため、動作しない or 不安定になるアプリが存在します。
3. プレビュー版から元に戻すと初期化される
デベロッパープレビュー版へアップデートした後、元のOSバージョンへ戻すことは可能ですが、その際、端末が初期化されます。
大切なデータがあれば、事前のバックアップをお忘れなく。
バックアップ手順の詳細は、関連記事【Androidのデータをバックアップする方法! スマートフォンのデータを保存する特徴と使い方まとめ】で解説しています。

Android 12のOTAイメージを手動でサイドロードする手順
Android 12のプレビュー版は、主に3パターンの方法で導入できます。
①:Android Flash Toolより ブラウザ上でインストールする | ②:ファクトリーイメージを 手動でインストールする | ③:OTAイメージを 手動でサイドロードする | |
---|---|---|---|
難易度 | 普通(コマンド入力不要で ブラウザ上で操作が完結) | 難しい (adb環境の用意が必要) | 難しい (adb環境の用意が必要) |
端末内データ | 初期化される | 初期化される | 引き継げる |
ブートローダー のアンロック | 必要 | 必要 | 不要 |
今回はこのうち、”端末内データを引き継げる”・”ブートローダーのアンロック不要”という2点でメリットがある方法③を例に、詳細な手順を紹介します。
次の2ステップで作業します。
- パソコンのadb環境を用意する
- adb sideloadでOTAイメージをインストールする
流れとしては、ファクトリーイメージを読み込む際と似ています。
1. パソコンのadb環境を用意する
お使いのパソコンでadbコマンドを使用できる環境を用意して下さい。
Windows・Macそれぞれにおける手順は関連記事で解説しています。


またパソコンとAndroidを接続するケーブルも必要です。
AndroidのUSB端子の形状(micro USB / Type C)に合わせ用意しましょう。
さらに設定の システム から 開発者向けオプション を開き、USBデバッグを有効にして下さい。
初めて開発者向けオプションを使う場合、デバイス情報の ビルド番号 を連続タップして、メニューを表示させて下さい。
その他、USBデバッグの全般的な説明含め、関連記事【AndroidでUSBデバッグを有効/無効にする方法! 設定をオンオフ切り替えよう】で解説しています。

2. adb sideloadでOTAイメージをインストールする
まずお使いのPixel端末が最新のシステムへアップデート済みか、設定より確認して下さい。

(右)「お使いのシステムは最新の状態です」と表示が出ればOK
手順の詳細は、関連記事【AndroidのOSバージョンを調べアップデートする方法! 最新機能へソフトウェアを上げよう】で解説しています。

次にGoogleのデベロッパー向けサイトから、Android 12のOTAイメージをダウンロードします。
続いてAndroidでブートローダーを起動します。
パソコンとUSB接続の上、次のadbコマンドを実行します。
adb reboot bootloader
または端末の電源をオフにして、画面が変わるまで 電源 キーと 音量下げ キーを同時に長押しでもOK。

Pixel 3a XLの例。
端末が再起動され、通常とは異なるfastbootモードの画面が表示されます。
音量アップ/ダウンキーでメニューを「Recovery Mode」に切り替え、電源ボタンで決定します。
「No command(=コマンドが指定されていません)」というメッセージと、ドロイド君が表示されます。
この状態で電源ボタンを押しながら、一度だけ音量アップボタンを押します。
これでリカバリーモードが起動します。
リカバリーモードのより詳しい情報は、関連記事【Androidでリカバリーモードの使い方! 起動しないスマホを強制初期化しよう】で解説しています。

リカバリーモード画面では、音量アップ/ダウンキーで上下に選択カーソルを移動でき、電源ボタンで決定します。
Apply update from ADB を実行すると、
次のメッセージが表示され、adb sideloadの待機画面となります。
Now send the package you want to apply to the device with "adb sideload <filename>"...
パソコンで下記adbコマンドを入力し、末尾に半角スペースを空け、
adb sideload
ダウンロードしておいたAndroid 12のOTAイメージをドラッグ&ドロップし、
enter で実行。
Android 12のインストールが開始するので、次のメッセージが出るまで待ちます。
Total xfer: ●●x
Pixelの画面で、次のメッセージが表示されたことを確認し、Reboot system now を選択。
Install from ADB completed...
再起動したPixelで「Android Developer Preview」と表示されれば成功です!
デバイス情報よりAndroidバージョンを確認すると、Android 12のコードネームとして噂されるSnow Coneの頭文字”S”が表記されています。
以後、プレビュービルドのOTAアップデートが自動的に提供されます。

プレビュー版のOTAアップデートが自動配信される例。
参考:プレビュー版をアンインストールして元に戻す手順
プレビュー版から元に戻したい場合、製品版のファクトリーイメージを読み込むことで実現できます。
具体的に、次の2パターンの方法があります。
- Android Flash Toolよりブラウザ上でインストールする
- ファクトリーイメージを手動でインストールする
例えば2の場合、開発者向けオプションでOEMロック解除した後、
ブートローダー(Bootloader)をアンロックします。
まずAndroidでブートローダーを起動するため、次のadbコマンドを実行し、
adb reboot bootloader
続いて次のfastbootコマンドで、ブートローダーを解除します。
fastboot flashing unlock
うまくコマンドが通ると、Bootloader Unlockに関する画面が表示されます。
音量上げ・下げ キーでメニューを「Unlock the bootloader」に切り替え、電源 キーで決定します。

「Unlock the bootloader」メニューが出るまで、音量キーを押下する。
これでブートローダーをアンロックできました。
ここまで簡潔に説明しましたが、より詳細な手順は関連記事【Pixelでブートローダーをアンロックする方法! AndroidでOEMロック解除してBootloader Unlockしよう】で解説しています。

次にGoogleのデベロッパー向けサイトから、製品版のファクトリーイメージをダウンロードします。
端末ごと歴代のAndroid OSバージョンが公開されているため、希望バージョンを見つけて下さい。

Pixel 3a XLのAndroid OS 11のイメージをダウンロードする例。
後はAndroidでブートローダーを起動するため、次のadbコマンドを実行し、
adb reboot bootloader
ダウンロードしておいたファクトリーイメージを展開したフォルダに含まれるファイル、「flash-all.bat」をダブルクリックで起動します。
コマンドプロンプトが自動起動し、ファクトリーイメージの読み込みが進みます。
しばらく時間がかかるため、待ちましょう。
最後に次のメッセージが表示されれば完了です。
Finished. Total time: ●●s
ファクトリーイメージの読み込みに成功すると、Android側で自動的に再起動・初期化が進みます。
設定からAndroid OSバージョンを確認し、製品版に戻っていれば成功です!

プレビュー版のAndroid 12から、製品版のAndroid 11へ戻した例。
Android 12のベータ版をインストールする方法
ベータ版で用意されるAndroid Beta Programは、最新のAndroid OSを比較的安定した状態で体感できるプログラムです。
デベロッパープレビュー版と比較すると、パソコン不要でOTA(無線ネットワーク)だけでカンタンに設定できるのが特徴です。
またアップデート後に元の状態へ戻す際も、そこまで難しい操作はいりません。
このパートでは、Pixel 3a XLへAndroid 12のベータ版を登録するケースを例に、手順を紹介します。
- 前提Androidベータプログラムの注意点
- 説明①Androidベータプログラムに登録する手順
- 説明②Androidベータプログラムを解除して元に戻す手順
前提:Androidベータプログラムの注意点
ベータ版を導入する前に、次の4点を留意しておきましょう。
- 登録可能な端末は指定されている
- 登録可能な時期は指定されている
- ベータ版では使えないアプリがある
- ベータ版から元に戻すと初期化される
1. 登録可能な端末は指定されている
導入対象の端末は限定されており、例えばAndroid 12のベータ版は、次の機種が対象となります。
メーカー | 機種名 |
---|---|
Googleデバイス(Pixel) |
|
ASUS |
|
OnePlus |
|
Oppo |
|
realme |
|
シャープ |
|
TECNO |
|
TCL |
|
Vivo |
|
Xiaomi |
|
ZTE |
|
2. 登録可能な時期は指定されている
Androidベータプログラムは、いつでも登録可能ではなく、次期バージョンがリリースされる前の数ヶ月間に限定されます。
例えばAndroid 11のベータ版は2020年5月ごろ公開され、同年9月ごろまでには終了しました。

(左)Android 11のスケジュール例 (右)その後ベータ版の登録可能時期が終了した
3. ベータ版では使えないアプリがある
ベータ版はアプリの動作検証もしっかり行われていないため、動作しない or 不安定になるアプリが存在します。
4. ベータ版から元に戻すと初期化される
ベータ版へアップデートした後、元のOSバージョンへ戻すことは可能ですが、その際、端末が初期化されます。
大切なデータがあれば、事前のバックアップをお忘れなく。
バックアップ手順の詳細は、関連記事【Androidのデータをバックアップする方法! スマートフォンのデータを保存する特徴と使い方まとめ】で解説しています。

Androidベータプログラムに登録する手順
次の2ステップで作業します。
- Android Beta Programへ参加する
- 端末側でシステムアップデートを実施する
1. Android Beta Programへ参加する
Androidベータプログラムのページへアクセスし、登録可能なデバイスから 登録 を選択します。
注意事項への同意が求められるので、確認して登録 すれば「お使いのデバイスがAndroid 12 Beta Programに登録されました」と表示が出ます。
この時点で、Android Beta Programの参加は完了です。
よくあるトラブルを紹介します。
- 登録可能なデバイスが表示されない
- 「お使いのデバイスを登録することができませんでした」メッセージが出る
登録可能なデバイスが表示されない
ログイン中のGoogleアカウントが正しいか確認して下さい。
Google公式の「お使いのデバイス」ページへアクセスの上、一覧の中に表示されなければ、別のアカウントに紐付いている可能性があります。

Pixel 3a XLの例。正しいアカウントであれば、このように表示される。
「お使いのデバイスを登録することができませんでした」メッセージが出る
登録 を選択後にエラーメッセージが出るケースがあります。
しばらく待ってから再度試して下さい。

(右)表示されるエラーメッセージ
2. 端末側でシステムアップデートを実施する
参加登録したデバイスでは、ベータ版のアップデートに関する通知が届きます。
または設定より、システム → システムアップデート と進み、
アップデートをチェック すれば、ベータ版のシステムアップデートが利用可能になります。
この後、ベータ版のダウンロードが始まります。
容量が大きいため、しばらく待ちましょう。
完了すると、今すぐ再起動 と出るので実行します。
再起動したPixelで「Android Beta Program」と表示されれば成功です!
デバイス情報よりAndroidバージョンを確認すると、Android 12のコードネームとして噂されるSnow Coneの頭文字”S”が表記されています。
以後、ベータ版のOTAアップデートが自動的に提供されます。
参考:Androidベータプログラムを解除して元に戻す手順
次の2ステップで作業します。
- Android Beta Programの登録を解除する
- 端末側でダウングレードを実施する
なおベータ版からダウングレードすると、端末のデータが初期化されます。大切なデータがあれば、事前のバックアップをお忘れなく。
バックアップ手順の詳細は、関連記事【Androidのデータをバックアップする方法! スマートフォンのデータを保存する特徴と使い方まとめ】で解説しています。

1. Android Beta Programの登録を解除する
Androidベータプログラムのページへアクセスし、参加中のデバイスから 登録を解除 します。
注意事項が表示されるので、登録を解除 すれば「デバイスがAndroid 12 Beta Programから削除しました」と表示が出ます。
この時点で、Android Beta Programから脱退は完了です。
2. 端末側でダウングレードを実施する
プログラムから脱退したデバイスでは、ベータ版のアップデートに関する通知が届きます。
または設定より、システム → システムアップデート と進み、
アップデートをチェック して、更新をダウングレードします。
この後、元のOSバージョンファイルのダウンロードが始まります。
容量が大きいため、しばらく待ちましょう。
完了すると、今すぐ再起動 と出るので実行します。
再起動したPixelが工場出荷状態に戻っていれば成功です!
デバイス情報よりAndroidバージョンを確認すると、Android 11へダウングレードされています。

ベータ版のAndroid 12から、製品版のAndroid 11へ戻した例。
〆:最新のAndroid OSを体験しよう!
以上、Android Beta Programの登録&解除方法まとめ! プレビュー版/ベータ版をインストールして最新OSを体感しよう の説明でした。
プレビュー版やベータ版を試せる機種をお持ちであれば、次世代のAndroid OSをいち早く体感できます。
元に戻す場合に初期化が必須な点は要注意ですが、興味があればお試し下さい。
参考 Android Developers – Android 12デベロッパープレビュー
参考 Android Developers – Android 12を入手する
参考 Android Developers – Full OTA Images for Nexus and Pixel Devices
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